大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和53年(ワ)10441号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

本訴の請求の原因1項は次のとおりであり、本件は被告の債務不履行を理由に損害賠償を求めた事案である。

「原告は、被告との間で、昭和四七年二月一日被告製造の刈払機FBC二〇型等の刈払機およびその部品ならびに附属品を買受けるための継続的取引契約を締結した。」

【判旨】

一請求の原因1は当事者間に争いがない。

右争いのない事実に、<証拠>を綜合すると、

1 原告は、昭和四五年七月から被告の製造する本件刈払機および刈払機FBC一〇型等とその部品、附属品を被告より買受け、これを国内で販売するほか、英国、ニュージーランドおよび米国に向け輸出販売し(特に米国向けについては、米国のコナウェイ社との間に昭和四五年一一月一九日付で本件刈払機の一手販売契約を結び、その頃被告から本件刈払機一〇〇台を購入してコナウェイ社に輸出販売したほか、昭和四六年八月二〇日一〇〇台、同年一〇月三〇日五〇〇台を輸出し)て来たところ、原、被告間の取引が増加し、その額も多くなつたので、昭和四七年二月一日原、被告および原告代表者間で、(一)被告はその製造する刈払機、その部品、附属品を原告に継続的に売渡し、原告はこれを輸出するために買受けるものとする、(二)被告が原告に売渡す製品の価格は別に定めるところによる、(三)原告が被告に対し製品を発注するときは、原則として注文書によるものとする、(四)被告が原告に売渡す製品の引渡場所は原告の指定場所とし、運賃は原則として原告の負担とする、(五)原告代表者は、原告の被告に対する本契約に基づく債務を連帯保証する、(六)本契約の存続期間は、契約成立の日から一年間とし、期間満了の三か月前までに原、被告いずれからも文書による契約の変更、又は解約の申し出がないときは、さらに一年間自動的に延長し、その後も同様とする(なお、この契約期間の定めについては当事者間に争いがない)旨の各約定、その他代金支払方法および代金支払遅滞の処置等に関する約定を含む取引契約を締結したこと、

2 そして、原告は、その後も昭和五〇年七月二〇日頃まで被告から本件刈払機を含む刈払機を買受けて来たが、この間コナウェイ社に対し本件刈払機を少くとも昭和四七年六月二五〇台、同年一〇月一〇〇台、同年一二月二二五台、昭和四九年二月五〇〇台、昭和五〇年七月二五〇台それぞれ輸出販売したこと(なお、英国向けの本件刈払機の輸出は昭和四八年末以降なく、またニュージーランド向けのそれも昭和四九年一一月以降ない)、

3 また、海外向けの本件刈払機の取引については、原告において被告に対しあらかじめ電話をし、かつ注文書を交付し、これに基づき被告はその注文にかかる本件刈払機をその都度製造し、これを原告に引渡していたこと、

以上の事実が認められ<る。>

二ところで、<証拠>によれば、

原告は、昭和五一年一月一二日コナウェイ社から本件刈払機二五〇台を買いたい旨の連絡を受けたので、その頃被告に対し電話でその注文をした(ただし、注文書を被告に対し交付するに至つていない)ところ、被告は、昭和五〇年末頃に本件刈払機についてカリフォルニア州法人HMC社と独占かつ排他的な契約を締結し実行していたため、原告に対し右注文には応ぜられない旨答えたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

そこで、原告は、前記取引契約の存続期間中は被告において原告の買入れ注文に応ずる義務がある旨主張する。

しかし、前記一認定の事実によれば、原告と被告間の取引は、右取引契約に基づき、原告からの一定数量の注文の都度個別の売買契約をくり返し締結するという形態で行なわれて来たことが明らかであるが、右契約上、原告が被告以外の他のメーカー製造にかかる刈払機(なお、<証拠>によれば、国内には刈払機の製造会社が昭和四五・六年当時二〇ないし三〇社あつたし、現在は五〇社ぐらいあるが、その製造する刈払機の性能、仕様等は本件刈払機と大差がないことが認められる)を取扱いえないような約定や被告に対し契約存続期間中に一定数量の本件刈払機を製造販売するよう義務づけるような約定はなく、もとより海外向け、特に米国向けの本件刈払機につき原告がその一手販売権等を有していたわけでもないことにかんがみると、右取引契約が、本件刈払機の売買についての包括的予約たる性質を有するものとは解せられないであろう。したがつて、右取引契約に基づいて、被告に当然原告の注文に応じなければならない義務があるとはいえない。

それ故、被告に右の義務のあることを前提とする原告の本訴請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。

(大澤巖)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!